フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ)

バッハ作品に新たな光を当てる

(C)Aymeric Giraudel
(C)Aymeric Giraudel

 バロックからテクノ・ミュージックまでを網羅し、コンサートホールからクラブまで様々なシーンで音楽を届けるピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ。日本でもファンを着実に増やしているルクセンブルクの俊才が、昨年に続いて今年も来日ツアーを行う。
 演目は相変わらず実に多彩。ソロ2つ、アリス=紗良・オットとのデュオという計3つの異なるプログラムを披露する。今回が初タッグとなる2人のデュオは、情熱と冷静を併せ持ったスリリングな掛け合いが楽しみだ。
 ソロ公演は、東京、名古屋、西宮の3都市で開催。プログラムの中核をなすのは、30代半ばのJ.S.バッハの代表作のひとつ「フランス組曲」だ。愛妻アンナ・マグダレーナのために書かれた作品(全6曲)で、当時流行していたフランス風の舞曲にインスピレーションを得ている。トリスターノは緻密な音階を整然と彫琢しつつ、持ち前の即興性で作品の新たな魅力を十二分に引き出してくれることだろう。
 名古屋公演では「フランス組曲」を全曲演奏。東京と西宮では、作曲家としても活躍する彼らしく、自作曲と十八番のJ.S.バッハを組み合わせたプログラムで臨む。J.S.バッハ作品は、「トッカータ」と、ブルガリア人ピアニスト、エミール・ナウモフ編の「コラール」も演奏予定。そして締めくくりには、トリスターノの自作曲で、「フランス組曲」へのオマージュ的な「ラ・フランシスカーナ」が置かれており、今回も斬新で瑞々しい音楽宇宙の創造に期待が高まる。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ2014年5月号から)

★6月7日(土)・三鷹市芸術文化センター 問:0422-47-5122
 12日(木)・名古屋/電気文化会館 問:052-204-1133
 14日(土)・兵庫県立芸術文化センター 問:0798-68-0255

フランチェスコ・トリスターノ&アリス=紗良・オット デュオ・リサイタル
★6月24日(火)・すみだトリフォニーホール Lコード:39835
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040